ファッションは、「ファッション通信」を録画して見るくらい好きなんだけど、最先端のモードは私にとっては美術館で見るアートであって、自分で所有したり着たりするものじゃない。自分は清潔でサイズが合ったユニクロを着ていればいい。という存在だったので、アレキサンダー・マックイーンも、バーニーズ・ニューヨークに緊張しながら見に行っておそるおそる触ってみるようなものでした。モデルみたいな体形でメイクも上手な友達が嬉々としてドリス・ヴァン・ノッテンとかアレキサンダー・マックイーンを語ること自体がカッコいいなぁと思ってポーっと見てた。そんな感じなので、ファッションの世界の人のドキュメンタリーも、振り返ってみるとけっこう見てる。
彼の世界の驚異的な美しさには真っ暗な闇がある。裸にした肥満のモデルの顔をマスクで覆ったのは、トム・フォードが「ノクターナル・アニマルズ」の冒頭でパクった。ファッションにおけるアイデアは絞りつくされていて、最高の才能のあるアーティストたちが血を流してそれでも絞り続けてる。出てくるのはもはや、デヴィッド・リンチのアートや映画みたいな異形のものばっかりだ。
新しい美って常に、シーズンごとに見なきゃいけないものなのか?
コロナの影響もあって、ニューモードのショーをシーズンごとにやるのをやめようっていう動きが出てるとニュースでよみました。締め切りを決められないと出てこないものもある、追いつめるから出てくる美もあると思うけど、歌舞伎役者みたいに、必ず早死にするコースになってしまってる。ロックスターよりも休みにくい。極端なことを言うと、もう人は狂気しか美しいと思えなくなってしまったのかもしれない。
長く生きることが幸せなわけじゃないけど。どうやっても闇から逃れない人生なら、それをとてつもない美という形で見せることができた人が不幸とは言えないかもしれないけど。
そして、彼がいなくなってもファッション業界は続くんだよなぁ。