映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ビリー・ワイルダー監督「翼よ!あれが巴里の灯だ」2618本目

1956年の作品。ニューヨーク・パリ間の無着陸飛行が実現されたのが1927年だそうな。そのくらい飛べないと欧米間の空軍による対戦はできないし、アメリカが日本を空から攻撃することもできなかったわけだ。

しかし軍用機は小さくて軽いけど旅客機は重いので、私の友達が海外留学など始めた1980年代にはまだ日本からヨーロッパの飛行機もアンカレッジで途中駐機して燃料補給してましたね。私が初めて乗った国際便は成田ニューヨーク間の直行便、初めてのヨーロッパ行きは成田ロンドンの直行便。1990年前後のことです。「アンカレッジ経由」は私にとって、私より先に海外へ行った人だけが経験したちょっと憧れの世界だったな…おっと完全に脱線してしまいました。

この映画のジェームズ・スチュアートは、金髪の若者という役柄。普通っぽくてひょろひょろしてるところが、なぜか大泉洋を思い出しました。ご近所の若いの、といった親しみやすさ、多くの人が多分自分の若い頃だ、と思える普通さ。そんな特徴が共通してる気がします。

去年、与那国島空港で見た迷彩色の軍用機は、大きさはこれとあまり変わらないけど、中身の詰まった鉄のかたまりで、すごい轟音をたてて猛スピードで飛び去っていきました。それと比べると、リンドバーグの飛行機はまるで紙飛行機か「鳥人間コンテスト」、さもなければドローン!?のようで、ハラハラしてしまいますね。ただでもハラハラなのに、途中居眠りどころか完全に寝入ってしまったり、タンクを間違えて上空でプロペラが止まりそうになったり。33時間ぶっ続けで操縦なんて、いまどき地上のトラックでもNGですね。でもこういう、どこのスイッチを入れたらどこが動く、ということが明確なメカメカした機械って、コンピュータチップが全部制御しちゃって何がどうなってるかわからない機械より、なんかチャーミング。

アメリカとフランス、その途中の国々の協力がなければ実現できないんじゃないかな、こういう挑戦って。

最後は絶対、丸い化粧鏡をくれた女性と再会して「君の鏡のおかげで、僕は海中に突入しないで生きて帰ってこられたよ」っていうと思ったんだけどな! 

翼よ! あれが巴里の灯だ [DVD]

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  • 発売日: 2012/01/30
  • メディア: DVD