映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

浦山桐郎監督「キューポラのある街」3

浜田光夫吉永小百合でとっても有名な、1962年の作品。キューポラ=煙突がにょきにょき生えてる、鋳物工場の多い埼玉の川口が舞台です。このところブログで「昔の映画は女優さんが可愛い」と続けて書いてるので、今回も「吉永小百合が可愛い」と書くつもりで見てましたが、この映画の彼女は、女神のように優雅で優しい大人の女性にはまだなっていなくて、ほぼハーマイオニーです。優等生で気が強くて、父親に「そういうの、無知蒙昧っていうのよ。」って意見しちゃったり、チンピラの親玉にケンカ売りに行ったりしちゃう、少年のような女の子です。
天才バカボンのママ・・・いや、ハジメちゃんにも見えます。(理屈っぽいところが)そして父親(のちに黄門様と呼ばれるようになる東野英二郎)がバカボンのパパのモデルなのではないかと、わりと本気で思う。

川口って街には縁がなくて行ったこともないので、今と比べることもできないんだけど、この時代によくあった工場の街の風景なんでしょうね。

ダボハゼの子は、ダボハゼだ!」とか半島の人に対する発言とか(愛をもって描かれてるんだけど)、言葉の激しさが何かすがすがしい・・・。難しいですよね、誰かを傷つけるような言葉は使いたくないけど、腹から出てくる言葉をそのまま言いたいし、そのまま聞きたいという気持ちも強くある。

後半、教会の説話のように、勤労と勉学と連合によって明るい未来を築いていこうと団結する場面もあるけど、今日本のNPOとかが盛りたてようとしている途上国の風景のようで、そういう気持ちを持てる人たちはさいわいだなぁと思います。

このあとこの少女はどうなったんだろう。まじめに勉強して働いて、労働組合に推されて市議会議員にでもなったか。今だったら空気読めない優等生なのかもしれないけど、そういう人も素敵。というか、思ったほど教育的すぎる映画ではなくて、ラストに至るぎりぎりまで、みんな悪い道に迷いそうになったりしてる。ハッピーエンドを後でくっつけたのかなと思うくらい、大方のところは「工場の街の若者の迷いや悩みを描いた映画」だと感じました。以上。