映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クロード・オータン=ララ監督「赤と黒」157本目

1954年作品。

やった、借りられた!
花咲ける騎士道」での王子様っぷりにまいってしまって、ジェラール・フィリップの出演作品が見たいと思ってたんだけど、TSUTAYA DISCASではほとんど扱ってません。店舗にはこの映画のDVDがあったのですぐに借りてきました。今ちょうど映画館でも上映してるようですが、時間が合わなくて行けないし。

この作品は「花咲ける・・・」の3年後。すこし落ち着いた印象。しかし胸元フリフリのシャツがこれほど似合う男性はまずいません。
この映画でジェラールは、美しく野心的で、常に不安でのし上がるための計算ばっかりしている青年を演じています。ということは当然、自分の美貌という武器の価値をよく知っていて、使いまくっています。女という女は、片っ端からコロリコロリとひっかかります。

軍隊(赤い軍服)か出家(黒い僧服)か?・・・その二択しかないのか、と不思議に思いますが、19世紀のフランスの庶民はそんな感じだったんでしょうか。神学校に通ってたはずなのに決闘を始めたり。

人を信じられず、すぐにカっとなって手が出るし、とんでもない犯罪者気質な主人公。どこへ行っても罪を重ねていくばかりです。サーカス団員とか、今なら映像プロデューサーとかになればその才能が活かせただろうに。
自分の中のねたみ、卑屈さ、愛情の裏返しの憎しみ、とかを爆発させたのが発砲事件で、その判決を経て初めて平穏な心境に至る・・・という。

筋だけ追うと「復讐するは我にあり」みたいですが、ジェラールの美しさとさわやかさのおかげで、王子様ムービーのような印象で、「ジェラール様になんてひどいことを!キャー!」と言う人がいてもおかしくありません。

3時間の長尺もあるけど、ちょっと重い一作だったので、現代劇も見てみたいなぁ。
以上。