映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

番匠義彰監督「抱かれた花嫁」323本目

1957年作品。
とてもよく作られた映画です。
ストーリーもきれいに伏線を仕込んであるし、浅草の劇場や日光の名所、楽しみをたっぷり盛り込んだおなかいっぱいな映画。

浅草の寿司屋の看板娘を中心に、寿司屋+ストリップ劇場を舞台に、母と歌手、脚本家=長男、踊り子と恋に落ちる青年=次男がドラマを繰り広げます。

松竹歌劇団の大人数のラインダンスは壮観。とにかく数が多い!この頃が全盛期だったのかな。松竹が誇らしげにこのシーンを映画に盛り込んだ感じが伝わってきます。
朝丘雪路をはじめとした踊り子たちも元気で可愛い。しかし本人役で登場する小坂和也の手持ち無沙汰な感じはどうなんだ(笑)。

看板娘の有馬稲子が、賢くて美しくてすてきです。その母親役、一人で寿司屋を切り盛りしてきた女将の望月優子の演技も素晴らしい。
たくさん出てくる二枚目男性陣は、若くして亡くなった人もいたりして、今に至るまでずっと活躍されていた人が少ないようです。女将の昔の恋人で今は落ち目の歌手を演じた日守新一が、落胆した女将を慰めにきたときの表情が、なんともあたたかくて心に残ります。

タイトルは「抱かれた花嫁」だけど、映画のなかでは誰も結婚しないし、誰も抱かれません。東スポでも末尾に「か?」くらいはつけるんだけどなぁ。