映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

コーネル・ムンドルッツォ 監督「ジュピターズ・ムーン」1883本目

これずっと見たかったんだ。
日経新聞の映画欄で久々の五つ星だったので。映画文化と関係なさそうな新聞だけど、ここの評価は昔から信頼できる、というか、私と合うのかもしれません。

すごく美しい映画。浮遊する青年の、浮き方がうっとりするくらいきれい。どうやって撮ったんだろうね。
ジュピターズムーンというタイトルは、公式サイトによると「エウロパ」つまりヨーロッパのことを指すようだけど、私は最初、この青年が木星の月のような重力を持っていて、それを自由に操れるということかなと思った。

辛く厳しい現実に押しつぶされそうなときに、逃げ場のない魂がふっと浮かぶ・・・というのが好きです。
浮かぶのではなく、もっと様々な形で逃げ出すのでもいい。そういうストーリーの小説や映画はいくつもあるけど、だいたい好き。

中欧も東欧も中東もほとんど行ったことがないので、この映画の暗くて静かな風景と音楽と人々がすごく新鮮で、惹きつけられます。

500年前だったら、内戦で国を追われた人たちは、後に「民族大移動」と呼ばれる移住を近隣諸国にすればいいだけのことだった。逃げた先に収容所はなく、誰も助けてくれなかったけど、勝手に住みついて勝手に仕事を探すことができた。国境をしっかり統治するのは悪いことじゃないけど、世界中、日本中、どこに行っても、攻撃的な先住人が自分を守るために後から来る人たちを攻撃してる。攻撃的じゃない先住人は、とっくに後から来た人たちにやられてしまったあまり残ってない。攻撃的な人たちほど、人を信じないからすぐに攻撃する。宇宙はそのうち、攻撃的な地球人だけの宇宙になってしまうのかな。

人は意外と、上を見てないものだな。