(ほぼネタバレあり)
在りし日のフィリップ・シーモア・ホフマン、今よりちょっと若いイーサン・ホーク。兄のアンディ(ホフマン)が弟のハンク(ホーク)に宝石店強盗を持ちかける。もちろん普通の素人。なんか痛い、いやな予感がします。サングラスと付け髭で返送したらフレディ・マーキュリーみたいになってしまった弟。どうやら兄は自分では手を下さないようで、現場にはいません。弟はにわかに捕まえた相棒を強盗に入らせて自分は外で待ちます。この、アメリカのちょっと寂れたショッピングモールの感じが、すでにわびしい。。。
計画は失敗して最悪まであと一歩(※母だけが死んで共犯者が生き残って証言するのが最悪かな)というところで終わります。
卑怯の連鎖。
兄は長年の恨みをぶつけるかのように弟を操ろうとする。弟は何も深慮せず、話に乗るけれど、自分は手を汚さないために共犯者を見つける。共犯者は実弾の入った銃を持っていた。母は店を守るため命を張った。親や兄弟を裏切るほどの罪を兄はすでに犯していたし、弟はもともとの弱さから兄の策略にひっかかった。母を逝かせて、父は兄のほうを疑う。弟は兄の妻と寝ていた。…という地獄。どこからそうなってしまったのか、昔からとっくにそうなる伏線が張られてたのか。
悲惨すぎて見るのがみじめな気持ちになってくる。兄は弟をずっと憎んでるのに、弟は憎まれていることに気づかずに兄の言いなりになってるんだ。でも憎むってどういう感情だろう。本当は愛してもいたんだろうか。ためらっているうちに兄は撃たれる。卑怯は連鎖して悲惨が悲惨を連れてくる。
兄という立場は、何がなんでも家族や自分を守って戦い続けるのがサガだから、「俺を撃てよ」とは思えないのかもしれない。父の立場はそのサガがもっと深い。
でもやっぱり、シドニー・ルメット監督はすごいな。突き詰めると人間って、愛と、その裏返しの憎しみでできてるのかもしれない。