<ネタバレあり>
これは原題も邦題もいいな。原題は「Unfaithfully Yours」、手紙に最後に書く「Faithfully Yours」をもじって、夫婦の間の不誠実(の疑い)を表してる。邦題は、指揮者の夫の妄想「殺人幻想」と「幻想曲」(というジャンルがちゃんとあるらしい)の両方にかかっててよくできてる。
プレストン・スタージェス監督作品は「サリヴァンの旅」がとても面白かったんだけど、この映画はテンポの良さより指揮者(レックス・ハリソン)のコミカルなブラックさが見どころ。彼の妻(リンダ・ダーネル、「マルホランド・ドライブ」のローラ・ハリングに雰囲気似てる)は本当に透き通るようにきれいで、夫は心配で仕方がないだろうな…。それにしても、この夫の妄想は激しくてちょっとコワイ。名指揮者がこれほど激しく妄想しながら名演奏ができるもんなのか。
レックス・ハリソンはこの映画の制作年に、愛人に自殺されて遺書の隠ぺい工作を行ったとして20世紀フォックスとの契約を打ち切られています。この映画はそのフォックスから1948年11月に公開されているので、映画撮影中だか公開前だかの話だな…。ブラック・コメディと笑って流せない、この鬼気迫る演技。
映画はめでたしめでたし、で終わって、なんかすごくほっとしました。 。。