映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

シドニー・ルメット監督 「ウィズ」3077本目

これ実はずっと見たかった。1978年、43年も前にドナ・サマーやマイケル・ジャクソンをフィーチャーして作られた、黒人版「オズの魔法使い」です。

親密で暖かそうな謝肉祭のファミリー・ディナーの場面から始まります。同じ場面でもミヒャエル・ハネケだと絶対みんなそれぞれ腹に何かたくらみがあるけど、黒人の人たちだと暖かく思えるのも、ある種の偏見だろうか…。

なんと監督はシドニー・ルメット。「グロリア」の、「狼たちの午後」の、「セルピコ」の、「ネットワーク」の、「その土曜日7時58分」の。

ダイアナ・ロスはまだ「大人になるのって怖い」と歌うドロシーで、舞台はカンザスではなくニューヨークの下町、つむじ風は雪と一緒にドロシーを巻き込んでいきます。

やけに歌のうまいカカシはマイケル・ジャクソンだ。ドロシーと二人ですごく楽しそうに歌い踊りながら、黄色いレンガの道をエンパイア・ステートビルみたいな高層ビル街へと進んでいく。なんていい時代。全然ヒットしなかったらしくて、解説には「ブラック・エクスプロイテーション・ムービーの終焉」って書いてあったけど、2人の全盛期はこれからだったからね。

ブリキ男(ちょっとスチームパンクっぽい)はニプシー・ラッセル、ライオンはテッド・ロス。細かい美術がいちいちユニークで、ジュディ・ガーランドのオズとの違いがとても面白いし、みんな歌がうまい。ブリキ男の歌はニュー・オーリンズ風でライオンは朗々と歌い上げる。四人四様のボーカル・スタイルです。

良い魔女グリンダを演じてるのはリナ・ホーン。(何でも緑色だからグリンダなのか)ウィズの本拠地エメラルド・シティでは大勢のスタイル抜群のダンサーたちによって、ディスコ的な華麗なダンスが繰り広げられています。

ちなみに「黄色いレンガ道」を行くときのテーマ曲、歌詞は何て言ってんのかなと思って調べたら、Ease on down the roadですって、グーグル翻訳ではうまく訳せない。道なりに行けば楽々、みたいな意味かなぁ。(その程度の語学力)

この作品、今あらためて見る意義すごくあると思いますよ。アマプラで無料なので、ぜひ。 

ウィズ (字幕版)

ウィズ (字幕版)

  • ダイアナ・ロス
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