映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

イワン・プィリエフ 監督「カラマーゾフの兄弟」1653本目

1968年のソビエト映画。もちろんVHS。2本組で3時間52分!だけど、原作は文庫本で5冊だからなぁ。
これでも相当はしょっていて、いきなり長老の居所でのカラマーゾフ家族会議から始まります。
原作を読んでから、あるいはストーリーを知った上で名場面を楽しむ、歌舞伎みたいな見方をするのがベストかも。

どこかで「世界一面白い小説」と紹介されていたこの原作を読んだばかり。実際、小難しいけどかなり面白かったです。去年初めてロシアに行って、タマネギが乗っかったおとぎの国みたいな可愛い教会やだだっ広い広場の中に立ったりして、強烈に重厚なその国のことが初めて本当に気になってきました。原作では想像しきれなかった兄弟や女性たちの姿や、舞台となった教会や家の中の様子など、ビジュアルをこの映画で得られてとっても助かった気持ちです。現地製作なのできっと、少なくとも美術関係はリアルに再現できてるはず。

父フョードルはイメージより弱腰。長老は思ってたよりさらに老齢。ドミトリはパッと見は大人しそうだけど、動き始めるとまさにドミトリ。イワンはいかにもインテリでイメージ通り。アリョーシャは姿はイメージ通りだけど、もっと見るからに美形っぽくても良いかも・・・。カテリーナは、小説では容姿は無個性な印象だったけど端正な美人ですね。グルーシェンカは可愛らしい雰囲気だけどしたり顔、なるほどこういう娘なのか・・・。スメルジャコフは小説の方が”卑しい”イメージが強くて、映画では品のいい召使みたいだ。
イワンとカテリーナって、プライドが高いインテリで見るからにお似合いだなぁ。
アリョーシャに恋する足の悪いリーザや少年たちは登場しません。(彼らは、ドストエフスキーカラマーゾフ2を書くために登場させたキャラクターで、1にはいなくても筋が通るってことかな。映画製作者がどこまで著者の意図を汲めていたかは誰にもわからないけど。)

舞台は今の私たちの生活とだいぶ違うけど、実写で人が動いているのを見ると、割合かんたんに日本の現代にも移植できる感じはしますね。人間の基本的な感情ってどこも同じなんだろうな・・・。

本当にあらすじだけを追う名場面集だったけど、イメージを増強するのにとても役立ちました。見てよかった。