こういう、一見ガラの悪い少年少女たちの、尖った鎧と傷つきやすい柔らかい部分をちゃんと見つめるっていう、大きい人間愛みたいなの、好きですよ。ミシェル・ゴンドリーは、めちゃくちゃだけど楽しいことが大好きで、同じものを愛する子どもたちや若い人たちの側にいる。
「フロリダ・プロジェクト」に同じような感じを受けたけど、あっちの方が心に深く残っているのは、外からやってきた人たちにひどく傷つけられるというストーリーだからだと思う。この映画は、ただバスに乗って家に帰るという日常のなかで、ちょっとした憂さ晴らしのつもりでやっていることが、憂さ晴らしで終わるか、犯罪にエスカレートするか、危うい部分があって、「かわいそう」ではすまない印象が与えられます。
肌の色とか服装とかが違うけど、彼らも日本の制服を着た中高生たちと何も変わらない。
原題が面白くて、「The We and The I」っていうの。カタカナの「ウィ・アンド・アイ」ではほとんど何も伝わらない。「私たちってさぁ、」とか話すときの「私たち」って誰のこと?っていうことなのかなと思います。このバスの中の「私」「俺」はどこに所属してるのか。そして、一人になった私や俺はなんなのか。
一番ワルな少年と、カツラで目立ってた少女が、最後にバスに残って、尖った鎧を脱いだ元の姿に戻る。そのときの彼らの可愛いことといったら。
みんな、たまには鎧、脱ごうよ。って思う映画です。