映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョーダン・ピール監督「アス」2235本目

<ネタバレあり>

いろいろツジツマが「?」なところがあるけど、なんか本質的な気味の悪さがある。ナンセンスホラーというか、理屈じゃない生理的な違和感が面白い。なんでウサギを食べるのか。なんで赤い服なのか。・・・そして、追い詰められたからとはいえ、普通のおかあさんや子どもたちが殺人を犯していく。

赤い人たちが蜂起した動機付けは、必要だったんだろうか。なくてもいい、あるいはもっとぼんやりしていてたほうが「面白さ」は大きかったような気がする。この不気味ホラーの中では。

最後の最後の「オチ」は、ずっと予想して見てた通りだったので、やっぱりと納得しました。最近の映画はオチらしいオチを付けないものも多いけど、この監督の「ゲットアウト」もパキッとしたオチがあったので、今回もこう来られてなんとなくほっとしました。

「ゲットアウト」も驚きの映画で面白かったし、今思うと画面にも迫力がありました。この映画も、不思議に暗めの画面の中でうごめく黒い肌の人たちという、意外に見たことのなかった構成が続くのが新鮮で、それだけでも引き込まれました。

前作では人種間の畏怖という部分が注目されたけど、この映画を見ると、監督が着目しているのが生理的な違和感や気味の悪さからくる「怖さ」だということがよくわかります。題材がなんであれ、気色悪さを流してしまわず、みょうにしつこく追及するという、いい目の付け所で映画を作ってるなと思います。これからも、どんどん気色悪い映画を作ってください!

ルピタ・ニョンゴってやっぱりきれいだなぁ。黒い肌の女性の女らしさや繊細さがすごくあって、守ってあげたくなる感じがこの映画のどんでん返しをさらに効果的にしています。