映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

エドガー・ライト監督「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」3276本目

<ネタバレあり>

そっか、「ベイビー・ドライバー」に続いて、クラシックなポップスの楽曲がそのままタイトルになってるんだな。

カウチ映画派の私でも、これは劇場で見たかったので、時間が作れてよかった。ビビり顏のヒロイン、エロイーズ(トーマシン・マッケンジー、ジョジョ・ラビットに出てたのか)に感情移入しすぎて映画館でずーっとビビりまくりながら見たので緊張したー。これこそが映画館で新作を見る醍醐味ですね。

エロイーズに相対するのは、「クイーンズ・ギャンビット」で愛嬌あふれるヒロインを演じたアーニャ・テイラー=ジョイ。似てないから別人格ってわかる設定の、チャーミングな二人。それぞれ本当にカワイイです。グランマ、下宿の家主、バーのオーナーもスウィンギン・ロンドンの女優たち。女子力高いよ監督。家主を演じたダイアナ・リグとバーのオーナーを演じたマーガレット・ノーランは撮影終了後に亡くなっているけど、二人とも癌の闘病中の出演だったみたい。人柄のいいボーイフレンド、最後までずっと彼女を見つめていてくれて、暖かい気持ちになれます。その辺も「ベイビー・ドライバー」に沿ってるのだ。

エドガー・ライトがこういうエンターテイメント性が高く、かつ高品質な映画を作り続けることは、イギリス映画界にとって重要だと思う。「ベイビー・ドライバー」で悪の一味の奴らが粛清されることについて、気の毒だと思う人はたぶんいなかっただろうと思う…映画だし。それと同じように、(少なくとも犯人から見て)粛清される必然性のあった悪=食い物にした男ども、という設定を受け入れて#MeTooの視点はあまり気にせずに、スウィンギン60sってことで見たいものです。(そうしないと、それだけで一晩中議論してしまいそう)

男たちの影は完全にフランシス・ベーコンの絵だったな。あと、テレンス・スタンプ翁のその後が心配でたまらない。「しばらく昏睡状態だったけど、エロイーズのファッションショーの後くらいに意識を回復した」くらいな感じでオチをつけてほしいところです。。

すごくスリリングでドキドキしながら見られて、主人公やまわりの人たちに共感できて、勧善懲悪すっきり感があり、美術や撮影技術が卓越している。という意味で一級のエンタメ映画といえるんじゃないかな、と思います。見に行ってよかった~~

たまたまだけど、太古の昔にカムデンマーケットで買ったセーターを久々に着ていったので気分出ました。