映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 監督「マリア・ブラウンの結婚」2347本目

映画評論やさまざまなオススメ情報を読み散らかして早10年近く、名前は知ってるのにいまだに一本も見たことのない監督がいました。それがファスビンダー監督です。TSUTAYAに行っても、「映像乱れあり」の大昔のVHSしかないし、なかなかハードルが高かったのですが、Amazonプライム経由でStar EXに加入すれば見られるといいます。とりあえず7日間無料体験があるので、やっとの一本目を見てみることにしました。

終戦、帰らぬ夫、残された妻はたくましく図太く、あらゆる方法を使って生き延びていきます。マリア・ブラウンを演じるハンナ・シグラ、愛嬌のある美人でどこかひょうひょうとしています。このマイペースにきっと男たちは巻き込まれるんでしょうね。端的に言えば「悪女」。(タイプ打つの遅いな!)すごく魅力的な独特の女性像です。こういう人物像を描くのがジャーマン・ニュー・シネマかぁ。このときファスビンダー監督、わずか34歳。完成度高いです。落ち着きさえ見られます。そしてこのニヒリズム。早く成熟してしまった人は早逝してしまうんだろうか。戦争を生き延びてしまったユダヤ人の作品にも虚無を感じることがあるけど、ドイツ人の作品は、鬱のような黒い穴が見えることがある。

この終わり方、すごいね。なかなかないですね。激しい生き方だなぁ。確かに、マリア・ブラウンは映画史に残る、図太く破滅型のヒロインだなぁ。やっと見られてよかったです、ほんとに。