1952年の作品、主演は田中絹代。
教科書にも出て来た「好色一代女」の映画化。好色といっても片っ端から手を出すんじゃなくて「恋多き」という意味でしょうか。この映画では「男運が悪い」という意味しかなさそうです。田中絹代は真面目でひたむきな薄幸女性が板につきすぎていると思うんだけど、京マチ子とか若尾文子みたいな、「触れなば落ちん」という、とろんとした魔性を感じさせる女優さんはいなかったのかな。このとき実年齢43歳だし。。。1944年の「陸軍」の8年後ですから。
それにしてもこのお春の生涯は「もの」ですね。気の毒だけど、主体性がなく、与えられた場所に強く根を張るでもなく、ひたすら不運に甘んじる魂のない人形みたいに描かれています。西鶴の原作にはもっと、輝くばかりの美しさとか、愛し合う幸せとかもあったんじゃないのかな?映画「曽根崎心中」では若い二人が情熱的に愛し合う時間も描かれてたのに。挙句の果てに「化け猫」だなんて。ここまで大女優を汚すのは、まるで新藤兼人が乙羽信子に鬼婆をやらせるみたいだ。
うーむ、美しくて立派な映画だったのに、こんな感想しか書けなくて…。