映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ケン・ローチ監督「エリックを探して」3153本目

ケン・ローチ監督(と、ダルデンヌ兄弟)の作品を見るときは、体調を整えてちょっと緊張しながら見る。空腹で見ちゃだめ、落ち込むから。でもこの作品は、ジャンルでいうとハートフルコメディ(なんとなくイケてない呼び方だけど)だった。

ダメダメな郵便配達のおっさんエリックは、自分と名前が同じサッカー選手のエリック・カントナの大ファン。ずっと愛している最初の妻と会わなければならなくなってパニックで自損事故を起こしてしまう。彼の立ち直りを応援する同僚が自己啓発本を読んだ影響で、自分の尊敬する人と話しているイメージを思い浮かべるようになり、彼の部屋にちょいちょいやってくる(想像の)カントナとの対話の中で、過去を振り返り、自分の弱さに初めて向き合うようになる。

エリック・カントナって割と早い時期に引退して俳優とかやってるんですね。どうりで演技がうまい。それにしても、超不器用なエリックおじさんが可愛いんだけど、イギリスの下層社会(と言っていいのかどうかわからないけど)の危うさというか、犯罪世界の近さも感じさせました。こんな風にいつも仲間が助け合えたらいいんだけどね~。ケン・ローチも、これは理想だとわかってるわけですが、たまにはいい気分で終わらせてくれて、ちょっと嬉しかったです。

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