映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ジョエル&イーサン・コーエン監督「シリアスマン」3154本目

<結末にふれています>

久々に見る、コーエン兄弟監督作品。「ファーゴ」の監督だから、一見シリアスな作品でも、彼らは手を叩いて笑いながら作っている(と想像する。前に見たインタビュー映像から)。ちょっと変わった人や、誰かが困ってるところを、笑うというより”嗤う”のがこの兄弟の作品。ちょっと昭和なセンスで、日本でいえば「とんねるず」みたいな感じかな?悪いことが起こりそう、起こりそう、起こった、そのあとはいいことがあるといいな、いやなかった、さらに悪いことが…という成り行き。すべては濃密なユダヤ教とユダヤ文化の中で起こり、進んでいく。このコミュニティ体制、自分が中にいたら窮屈できつそうだな…。”妻の婚約者”の事故死は彼にとっては最悪の運命の回避だ。いろんなことが落ち着いてきたところで、最後に訪れたのは胸部レントゲン検査を今すぐ伝えたいという医者からの電話と、間近に迫りくる竜巻。いいことも悪いことも全部チャラにしてしまう事態が起こるのって(別の監督だけど「マグノリア」が印象的だったな)、重いし逃げ場がないけど、それでやっとすっきりする、という不思議な安堵感もある。という意味で、私はこの結末きらいじゃないです。

非ユダヤ人の歯の裏に「助けて」ととれるメッセージが彫り込まれていた事件、面白かった。一番冒頭の、生き返ったのか悪霊になったのかわからない昔の聖職者の話は、結局ナゾだったな…。

シリアスマン (字幕版)

シリアスマン (字幕版)

  • マイケル・スタールバーグ
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