この映画はとても素朴ですね。隣のトレーラーの子が撮ったドキュメンタリーみたい。演技も過剰にならず、すべてが普段着。喜怒哀楽の表現はしない。ひたすら、なんとか生きようとしてる。生活保護ギリギリかそうでないか、健康で若い子なら見た目ではわからない。
沈む彼氏! 救うロゼッタ!だけど彼氏の不正を暴き、彼がやっていた仕事を奪うロゼッタ。その後なぜか自分から辞めると電話し、トレーラーの中で卵を1つだけゆでて食べるロゼッタ。塩もマヨネーズもつけずに。
トレーラーハウスまで追ってきた彼の前で、彼女は泣き崩れるけど、慰めがあるのか攻撃があるのか、何もないのか、わからないまま唐突に終わる。
「道徳」の授業で、「さあみなさん、これからどうなったか考えてみましょう」って使うような映画だなぁ。この監督たちの作品は、全部そうかもしれない。”貧すれば鈍する”というのか、明日も私と母が死なないで生きていられるように、しか考えられない世界。ダルデンヌ兄弟とケン・ローチは出発点が近い。そして初出演映画で主演女優賞を受賞するのは柳楽優弥みたいだ。
これ見られて良かった。ダルデンヌ兄弟ってどうもわからない、不親切が過ぎる、と思ってたけど、本当に作りたいのは作り物じゃないものなんだな。だからオチがないのが当然。やっぱり監督の原点になるような作品を見るのって大切。