すごい映画だ。最後まで目が離せなかった。
視覚・聴覚の二重障害を持つ人に限らず、接点を作れそうにない問題児に、周囲の者たちがどれくらい真剣に向き合えるか、という問題の最高の答えじゃないだろうか?
アーサー・ペン監督は、この5年後の「俺たちに明日はない」の監督だ。サリバン先生は、それと同じ年にダスティン・ホフマンを誘惑した(役柄の)アン・バンクロフトだ。なんて幅広い演技力。どちらの役も、そこにその人がいるようにリアリティがあります。
ヘレン・ケラーを演じたパティ・デューク、すごい。可愛い部分もありつつ、ジャングルで育った少年みたいに、何の秩序もないひとりぼっちの世界を生きているヘレンが、まさにそこにいるようです。
「奇跡の人」はヘレン・ケラーのことだとずっと思ってたけど原題は「奇跡を起こす人」=サリバン先生のほうだった。視点が違うよな、三重苦の象徴的存在に目が行く私と、克服させて奇跡をもたらした人に目が行く人たち。
頭の中は私たちと同じなのに、外部とのインターフェイスを持てない、閉じ込められたような状態の人たちの中には、ヘレン・ケラーのような人のほかに、自閉症の人もいる。彼女にサリバン先生がいて、東田直樹にファシリテーテッド・コミュニケーションがあった。神様がすべての人にそういう助けをもたらしてくれたら、と思う。
ザ・フーのTommyはこの実話に影響を受けたんだろうな。(ヘレン・ケラーと同様の障害をもちつつ匂いの感覚だけでピンボールの魔術師となって神格化される話)
これって「死の棘」とか「恍惚の人」とかと同じジャンルの映画とくくられるのかな。子どもの演技も含めて、感傷に訴える大げさな演出をしないところが立派で、抑えた分、映画の完成度が上がってる気がするのでした。