映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

吉野耕平監督「ハケンアニメ!」3615本目

「バクマン!」の題材をアニメにしたような作品かと思って見てみました。あれも面白かった。あっちはジャンプの人気マンガが原作、こっちは意外にも辻村深月が原作。映画になった作品を並べて見てみると、原作の形態の違いはあまり気になりません。どっちも熱く燃えて作品を作り続ける人々を描いた力作。

何で小説家の辻村深月がアニメ制作現場の小説を書いたんだろう?と思ってWikipediaを見たら、もともとアニメ好きでかなり取材を重ねたらしいですね。なんかリアルなのでアニメ制作の経験があるのかしらと思ってしまった。

この映画では、まるで斉藤瞳がほぼ未経験から大抜擢されたみたいに見えるけど、後半に下積み時代を語る場面があります。にしても斉藤瞳は自分の作りたいものがはっきりしていて、どんな百戦錬磨の人たちにも臆せず戦えて強いなぁ。ここで臆してしまう人けっこういるんじゃないかな。

映像制作会社でど素人の別業界から来たばかりの私(※制作部門ではない)が3分ていどの番宣番組を作らされたとき、構成案17回書き直して、編集や音効のベテランになめられてバカにされてサンドバッグとなったときの記憶がよみがえってくる・・・記憶じゃなくてトラウマか、

それにしても。自分の意見を通し、最高のものを作ろうとする監督の思いと現場の無理は、心情的には理解できるけど、美談にしちゃいかんやつだよな。尺も納期も厳格なテレビの枠でアニメを作り続けることにはもはや無理がある。1分伸びても公開が3日遅れてもほかのコンテンツに影響しないネット配信からのスタートで、売上も時間も余裕を作れるように移行した方がいいと思う。監督が長生きしたとしても、末端のアニメーターが一人、二人、死ぬ。

吉岡里穂ってとても誠実な演者だなぁ。吉岡里穂なのに、ときどき江口のりこだったっけ?と思う。江口のりこが演じそうな(主観です、すみません)役柄になりきってるから。”天才”の中村倫也も尾野真千子もいい(いつものことだけど)。柄本佑もいいけどちょっとトラウマよみがえるな。

とにかく今はコージーコーナーのいちごエクレアが食べたい。原作ではポンデリングなんですって?(こういう提携ってすごくあるよなぁ・・・)