映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クリント・イーストウッド監督「クライ・マッチョ」3666本目

2022年のキネマ旬報ベストテン入賞作品のうちまだ見てなかったものが、U-NEXTにいくつも入っていると気づいて片っ端から見てる。

イーストウッド監督作品を5本も10本も見た人なら、サムネイル写真と短い解説を読んだだけでこの作品がわかるような気がしてしまう。見終わってみてもあまり印象が変わらなかった。「こういう作品を作ろうと思っている」というプロットがそれほど膨らまないまま、イーストウッド作品のフォロワーの作品みたいなものができてしまった感じ。ラフォ少年のセリフは素人っぽいし、イーストウッドの声はもう聴きづらい。ストーリーにも演出にも目立ったところはない。ただひたすら安定してる。

どうしてこれがベストテンに入るのか、真剣に考えてみた。もしかしたら、クリント・イーストウッドという俳優、監督がすごく好きで、「クリント世界の旅」がずっと続くことを熱望している人がたくさんいるのかもしれない。シリーズ番組の視聴者から見れば、今度はメキシコだしロデオだし、趣向がちょっと違っていて、一緒に旅を続けているような満足感がある。こうやって趣向を変え続けて、クリントが生きているうちはずっと続きが見たい。・・・ちがうかな、妄想です、すみません。

この少年が、たとえば若き日のガエル・ガルシア・ベルナルだったら、やたら陽気だけど頑固さのある印象的なキャラクターになったと思うけど、この映画では「メキシコの少年」というアイコン以上に迫ってくる個性が感じられなかった。

見終わって「あーよかった」と帰れる作品なのもプラスのポイントだけど、「ミリオンダラー・ベイビー」みたいな一生胸に残る作品だって私たちは見たいんだ。現在93歳の巨匠にあまり求めすぎるのは図々しいけど、天国に片足踏み入れたような、地上を見下ろすような崇高な作品をどかんと作ってくれたらなぁ・・・

いやでも、一人ひとりの家を訪ね歩くように、こうやってローカルで出演者も少ない作品を作り続けるのが監督の魅力でもあるんですよね、きっと。

クライ・マッチョ(字幕版)

クライ・マッチョ(字幕版)

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