内田百閒の伝記映画、なのかな。「ノラや」でやっと気づいた。私も相当うちの猫を溺愛してるけど、この先生には負ける。映画のなかの内田百閒は子どものように純真で、ひたすら愛されるだけの存在といってもいい。まるで頼りないけど愛される末っ子気質。なんとなく、母をときどき泣かせてたけど懲りることのなかった私の父(ほぼ末っ子)を見てるようです。こういう人たちは、あまり表に出ようとか人の上に立とうとしないから愛されるわけなので、映画の主役にしてしまうとちょっと座りが悪いというか、「監督が自分を映して自己愛にふける映画」などと言われてしまうんだと思う。
まだ若い所ジョージが、今なら絶対言わないようなサラリーマン的なセリフを言ってたりして、やっぱりどうも落ち着かない。どうしてこう巨匠の晩年の作品って、ゆっくりとした間の悪いセリフ回しになるんだろう。
でも、戦争中も、戦争が終わってからも、猫がいなくなっても、年をとっても、愛されるおっさんと彼を囲む善意の人たちが変わらずにそこにいたということが、なんかほっとする。なかなか得難い小さな天国だったのかもしれないし、女性が不在でひきたて役な感じはあるけど、ちょっとほっこりするお話という感じでした。