映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アキ・カウリスマキ監督「トータル・バラライカ・ショー」3744本目

まずタイトルがいいよね。バラライカという楽器は、ビートルズの「バック・イン・ザ・USSR」でもロシア(当時はソ連)を象徴する楽器として歌詞に使われてたっけね。このコンサート、当時友達からCDのサンプル盤をもらったので何度も聞きました。映画だったので、サントラ盤ってことか。CDには入ってない曲もけっこうあるし、何よりレッド・アーミー・コーラスの人数が。AKBシリーズかEXILEシリーズの人たちの紅白のステージのよう舞台を埋め尽くすこのボリューム感と彼らの圧倒的な声量が最高ですね。ほかのどこで聞いた男声コーラスよりも太く大きい。ロシアの大地だ、モスフィルムだ。独特なものがありますね、あの国は。

時と場所を確認すると、1993年という年は1991年にゴルバチョフがペレストロイカを成し遂げて、エリツィンが大統領の時代。まだロシアが自由に湧いて、東と西が融合していくかもしれないと思えた時代。Wikipediaによると冷戦時代も今も、彼らは東を含む海外(日本にも来た)で演奏・ダンスを披露しているらしい。普通はロシアの楽曲しかやらないから、当局としてもOKなのか。ボリショイバレエ団のようなものかな。tatuのバックコーラスをやったこともあるとかで、わりあい幅広い活動をしてます。

場所はヘルシンキだそうで。12月23のヘルシンキはほぼ凍ってると思うけど、ロシアのみなさんも寒さには強いし、モスクワあたりからなら距離もそんなに遠くない。

音楽的には、フィンランドという国は北欧メタルの聖地であって、雪の中で”ハノイ・ロックス”の”マイケル・モンロー”が轟音ロックをかなでるという、ここだけですでに変なユーモアのセンスと音楽好きの土壌が感じられる国です。

レッド・アーミーの、誰も彼もゴルバチョフみたいな体形のすごい歌手のみなさんがアメリカの歌を歌うときの発音の怪しさとか、可愛くてたまりません。ソロで歌うとき、カウボーイズと同じトサカをつけてくれた人もいましたね。

しかしいろいろ調べてるうちに、2016年に飛行機事故で、たまたまロシアに残った3人を除く64人のメンバー全員が亡くなったというショッキングな事件も知ってしまいました。(12月に事故が起こり、翌年1月にはオーディションで新メンバーが加入して2月にはコンサートを行った、というこのスピード感もなにかロシア的に思える・・・)

さすがに今は海外遠征はキャンセルとのこと。本来、音楽は国境も民族も超えられるものです。またこんなジョークを一緒にできる日が早く来るといいなぁ・・・。

トータル・バラライカ・ショー

トータル・バラライカ・ショー

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