映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アンリ・ヴェルヌイユ 監督「ダンケルク」117本目

フランス・イタリア合作で、1963年公開。カラー作品です。

昔の映画って、しょっぱなはあんまり面白そうじゃないものも多い・・・知ってる俳優がいなかったり、あっ!と思うような美しいショット、美しい出演者、すごい展開とかがないと、その世界に入って行くのが難しいことがあります。

でもこの映画は、地味なようでツカミがあります。
カーキ色一色の兵士たちの中で、ひときわダラけたのがジャンポール・ベルモンド空爆を受けても防空壕に逃げ込まずにスカした態度のジャンポールが見たのは、おしゃれなブラウスを着た若くて美しい女性が、双眼鏡で爆撃機を追う姿。・・・次のシーンで、同じくらい若くてきれいな女性が、荷車に載せられた死体となって現れるのも、スカっと裏切られた気分です。

兵士たちはみんな、どこか楽天的で、非日常を感じさせません。
ジャンポールは双眼鏡の美女とその後ひともんちゃくあります。この辺からだんだん、日常的な常識が通用しなくなり、主人公の周りにも黒いもやがかかりはじめます。ここまでにすでに相当の兵士や民間人が亡くなっているのに、彼らが無事でいられたほうがおかしいくらいだ・・・という苦い思い。

それにしても「双眼鏡の女」の非常識っぷりは、最初から最後までスゴイ。戦争をなめてます。これがフランス人が妄想する「女らしい女」なのかな・・・。

とにかくジャンポール・ベルモンドがチャーミングな映画でした。
現在DVD等では入手が難しそうなので、リンクはナシ。以上です。