映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アニエス・ヴァルダ監督「幸福」3275本目

タイトル通りの、若くて美しい夫婦と可愛い子供たちの愛情あふれる時間から始まります。絵に描いたような幸福。…でも幸せってなんだっけ?

<ネタバレあります>

夫にとっての幸せは、愛する家族のほかに、素敵な女性との新しい出会いと恋にときめいているときだったのかな。妻を亡くして浮気相手に慰めを求めても、罪の重さから逃れられる日はたぶんない。

妻にとっては、理由を知らずに、輝いている夫を見ていた瞬間までが幸せだったんだろう。彼女と別れたらもっと夫を愛する、と笑顔で言ったけど、そんなこともう無理だった。幸福じゃない状態を予想して耐えられずにその先の時間を断ってしまった彼女が一番、幸福を意志的に選んだ人だったのかもしれない。

浮気相手は別れることもなく、後釜としておさまりそうな気配。でも最初から後ろめたさはあったし、この先一生それはついて回る。

幸せって…。

すごく(いやな表現だけど)女子力高いヌーベルバーグ、だった。赤裸々に描いたのは普通の女性の普通の感覚だから、広く受け入れられたんじゃないかな。

こんなに面白い、深い、作品を作ってたんだなぁ。もっと早く見ればよかった…。引き続きヴァルダ監督作品、見てみようと思います。

幸福~しあわせ~ (字幕版)

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  • ジャン=クロード・ドルオー
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