映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ピーター・ジャクソン監督「ラブリーボーン」351本目

NYから戻ってくる機内で見ました。日本語吹き替え。
純真でちょっと大人びてきた14歳のすてきな少女の命が、ある日唐突に残酷に失われる。
その子は魂だけになって、まだ近所にいるけど、彼女のイメージする楽しくてきれいな世で遊んでいる。
シックス・センス」みたいな、生きている人との間をつないでくれる人は現れない。
一緒にいる女の子は、彼女のお気に入りの「ひっくり返すと雪が降る置物」の中にいるペンギンが形を変えたものかと思ったら、最後のほうにそうではないことがわかります。

生まれて初めてのデートもキスもできないままの彼女は、思い残すことがありすぎる。
家族は悲しみと怒りで壊れそう。

ホラー映画にすることもできるテーマだし、勧善懲悪の色を持たせるのが順当なのだろうけど、描かれているのは「もう死んじゃったことはどうにもならない、そこから本人や家族や友達はどうするか」というものです。
犯人は早い段階でわかっているし、捕まえる機会もたくさんある。捕まえてもよかったと思うけどそうしなかったのは、描きたいのがそこではないからなんでしょうね。

人の魂は、どんな悲惨なことをされて、肉体が失われてしまったとしても、美しいまま損なわれない。
愛するものに何が起きようと、人は復讐の鬼にならずに前を向いていくほうがいい。
実際にそういう経験をした人が、この映画を見ていっぱい泣いて、きれいな気持ちになれたらいい・・・ですね。