映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ミヒャエル・ハネケ監督「ファニー・ゲーム」491本目

見た後の気分最悪という前評判をきいて、あえて他の人の感想や「ネタバレ」もたくさん読んでから見てみました。(ショックをやわらげるため)

ハネケ監督は、自分がドイツ人であるということをずっと原罪として重く抱え続けてきたんだろうか。
なぜ人はかつて、あのような残忍な行為に及んだのか?
それは集団心理なのか(「白いリボン」)、快楽のためなのか(「ファニーゲーム」)?
いずれにしても、誰の心にも鬼と菩薩がいる、と監督は考えているようです。
恐ろしい暴力をどうすれば無くせるか、真剣に考えたけど、真剣に調べれば調べるほど、無くすことは不可能に思える。ならば映画で啓蒙できないか。というようなことを考えたのでしょうか。
時計じかけのオレンジ」で犯人が、犯罪映像をずっと見せられて、暴力を恐れるように洗脳される場面があったのを思い出します。

一番怖いのは、この映画を殺人者側の立場で楽しんで見てしまえる人たちだという気がしますが、普通にゴロゴロいるのかもしれません。そういう意味で、映画で啓蒙することどころか、楽しみを与えてしまうだけなのかもしれません。

愛、アムール」は、そんなむなしさの果てに愛を貫くことを描いたのかな。
ハネケ監督は""神の視点""を持ったすごい監督だと思ってるけど、私たちと同じように痛む胸を抱えた人なのかな、とも思いました。

ファニーゲームUSA」はプロデュースと主演がナオミワッツか。いいなぁ彼女。めっちゃ普通のアメリカのお姉ちゃんに見えるのに、このマニアックさ。
ハリウッド女優がこのアンチクライマックスをどう演じたか、ハネケ監督がどういう演出をしたか、気になります。