映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

黒沢清監督「トウキョウソナタ」663本目

面白い映画だった。
リストラが中心テーマなのか?中心ではあるけど、それ以外のエピソードのほうが面白い。
リストラと、次男のピアノや長男の米軍や妻が強盗に入られることは、ほとんど関係ない。
出てくる人たちみんな、きわめてろくでもない状況にあって、ふっと力を抜いたらずぶずぶと落ちていきそうだけど、この家族4人は、それぞれ別の経験と理由からなんとか生き延びている。
美しいピアノの演奏で、なんかみんなチャラになって昇華されてしまった感じがする。
人生ってたぶん、こんなもので、正しい因果関係などないまま、元気になったりダメになったりしながら過ごしていくんだろうな。

そういうことは、世界中どこに行っても多分共通だから、外国の人が見ても通じるところがあるのかな。
安易なカタルシスがないところが、この映画のいいところだと思いました。