映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ロバート・ベントン 監督「クレイマー、クレイマー」668本目

1979年作品。母と映画館に見に行ったのを覚えてる。姉もいたかも。

ダスティンホフマンが、子どもの前でちゃんとフレンチトーストを作れずにダメダメな感じだったこととか覚えてるけど、今見るとメリルストリープ母さんがやけに悪い母に感じられる。家を出るにしても、今なら母の苦悩をしっかり描かないと、見る人の共感を得られない「つまらない映画」になってしまいそう。

初公開時には、かなり物議をかもしただろうし、それが制作者の意図だったんだろう、きっと。
今なら、出て行く母を演じるのはYOUだったりするわけで、メリルストリープは今なら絶対この役は受けなかっただろうなと思う。

こういう、社会規範にかかわることを真っ正面から描いた映画って、時代の特徴がそのまま出るね。
母親役をりっぱにこなそうとしているダスティンホフマンが、ベビーシッターの肩を抱きお尻をなでる。秘書を家に連れ込み火遊びをする。
「お父さんはがんばってるんだよ、勝手に自分を捨てて出て行った妻に息子を取られても、それでもお父さんはこんなに」っていう映画だったのかな。(意味を見いだそうとしすぎ?)

しかし、裁判ってなんなんだろうね、という気にもなってしまう終わり方でした。
母がいなくなるのは寂しいし、その孤独を一緒に乗り越えてがんばってきた父と引き離されるのも辛い。
家族ってたぶん血じゃなくて、いっしょに暮らしてなじんできた年月によって作られるものだから、今暮らしている人を大切にしろってことなんだろうな。