面白かった。
設定もストーリーも面白く、いかにもなキャスティングもOK(原日出子ののんびりお母さん、加瀬亮の引きこもり、岸部一徳の逃げ腰お父さん、木竜麻生の真面目だけど現代的な娘)だけど、何より私が高く評価する「間合い」が最高でした。
特に、妹が思いつめて…母が後から追いかけて…(ネタバレにならないよう肝心な部分を抜きました)場面が切り替わったら怪しい霊媒師が家に来てる、ってところ。
めちゃくちゃ共感して大泣きしてた私の気持ちは?(笑)
リアリティがあるとかないとか、感想はいろいろだけど、監督が実際にお兄さんをなくされてるという記事を読んで腑に落ちた。たぶんあの映画の中で、妹と母のさきほどの場面はフィクションにしても、霊媒師を頼むとか頼まないとかってのは本当に考えたのかもしれない、と思う。お葬式のときキッチンでお茶やらお酒の用意をしながら、私たちなんでこんなによく笑ってるんだろう、って思ったことがある。身近な人の死って、生活の一部で起こることで、そこ以外の毎日は今までと全く同じなんだよ。現実なんだから。そういう意味でとてもリアルで痛くて、かつ可笑しい映画でした。つまり一家族や一つの国や民族や人種にかかわらず、普遍的な人間ってものを描けてた。
この作品にはおおらかなかユーモアだけじゃなくて、どこか諦念のような寂しさも感じる。野尻監督が助監督を務めた「海炭市叙景」で感じたような"うすらせつない、うすらさびしい"感じ(この映画における私の感想から引用w)。それが、実体験から産み出された、長年熟成されたものなんだな、と、納得しました。
素晴らしい感覚を持った監督だと思うんだけど、きっととてもデリケートなので、あまりつまらない作品を手がけて神経をすり減らしたりしないで、いい作品を作り続けてほしいです。