映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

舛田利雄 監督「上を向いて歩こう」721本目

1962年の作品。
昭和30年代の娯楽映画って、ほんといいね。みんな元気でタフで目がキラキラしてて。香港やシンガポールやソウルに行ってから東京に戻ってくると、どことなく暗くて元気ないなぁと思うことが多いけど、この頃の東京の映像には原始的で猥雑なエネルギーを感じます。

主演はもちろん坂本九。このとき21歳だけど、まだ少年のようで、鑑別所を脱走したという設定が自然に感じられます。彼の相棒は浜田光男20歳、こちらも可愛いです。高橋英樹18歳は、まさかの不良役。美青年だけどまだキャラクターがくっきりとしていない感じ。吉永小百合17歳は、もちろん清らかで可愛いんだけど、この頃は”ものしずか”というより勝ち気で賢い少女です。

九ちゃんって本当に屈託なく明るいなぁ。いまこういうタレントさんっていないですよね。「いつもニコニコしてる」人がいたら、見るほうも「逆にじつは腹黒いんじゃないの?」、テレビに出ても「実は計算してんでしょ」というふうになりがち。

不良少年たちの激しいケンカが2カ所で同時進行するのを交互に映すクライマックスは、ダイナミックで見せます。で、最後は、やはりサユリが「みんな仲良くするのよ!」と一喝して決着。前を向いて自分の力で一生懸命がんばろう!太陽に向って!と、若干唐突で、かつ明るすぎてふーん?という感じだけど、あれほどの戦争が終わったわずか10数年後だと思えば、なんだか理解できます。その時代の日本人の「決意」のようなものを感じます。
この映画から52年たって、今日本は真逆のほうに振れていっていないか、心配です。。。