映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ミロスラヴ・スラボシュピツキー 監督「ザ・トライブ」3110本目

不良になる自由。ということを考えてしまった。

転入してきて、いきなりこんな暴力を浴びてしまったら、迷う間もなく、主役のセルゲイみたいにするっと、窃盗恐喝売春あっせんの道に入ってしまうだろうか。

なんの脈絡も背景も語られないけど、最初からそこそこ強いセルゲイは親が手を焼いて寄宿学校に放り込まれた不良少年だったのかもしれない。この学校はまるで子どもたちのことを見てない。不良グループはやりたい放題だ。

それにしてもこの閉塞感。聞こえない彼らはテレビも見ないしラジオも聞かないし携帯も持たない。スマホはまだない。外界との壁はないけど情報は何も入ってこない。ものすごく狭い世界だ。

見ている私たち、手話がわからない者が感じる閉塞感は、字幕のない映画を見るときの彼らと同じ気持ちなのかな。

誰にでも不良になる権利がある。”かわいそうな聾唖者はみんな素直でなければならない”なんていうアンクルトム的な考えはあっちゃならない。

でもこの映画に何を見出せばいいのか…監督は意図的に何も与えない。このおてけぼりな感じ。ヨーロッパ的。どうしても気になるので英語のWikipediaを見たら、この監督がブラッド・ピットがプロデュースする「Tiger」っていう映画を監督するという話があった。甘さのない偉大な作品になることを期待してます。

ザ・トライブ(R15版)(字幕版)

ザ・トライブ(R15版)(字幕版)

  • グレゴリー・フェセンコ
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