映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クリント・イーストウッド 監督「アメリカン・スナイパー」950本目

4月30日、シドニーへ向かうカンタス便の中で見ました。
カンタスなのでツアー客でも機内エンタメはデフォルトでついてます(系列のジェットスターは別料金)。
ついてるヘッドセットは簡易ヘッドホンタイプだけど、音がぼわーっとして聞き取りにくいですね。
念のため持ってきたジェットスターのイヤホンを接続して聞いたら、ずっと小さいボリュームでもかなりはっきり聞き取れるようになりました。でも、この映画だけはボワボワの音のままで見てしまったので、ほぼ「映像を見ただけ」。もう一度通しで見直すのはちょっと大変なので、このまま感想を書きます。

最近、戦争映画も名作と呼ばれるものは怖がらずに見るようにしてるので、私の中でこれはそのシリーズ中最新作。アメリカの中での戦争の捉え方の変遷を私なりに感じています。
「タクシー・ドライバー」の中のロバート・デニーロは、戦争から戻っても普通の生活に馴染めない、少し不器用な男として描かれていましたが、この映画の主人公は、戦争の英雄であり、アメリカにいても実力と人格で成功し、かつみんなから慕われる、”勝ち組”です。アメリカはとうとう、戦争による勝者も疑う勇気を持つようになったんだ、と思いました。そして、彼らが戦場で「女性や子供は守り、戦闘員だけを撃った」のではなく、「武装していない人はともかく、戦意を見せるものは一般市民でも、老若男女を問わず撃った」ことを認める勇気をとうとう持った。さて、この次にはどんな映画が来るんだろう?英雄不在の戦争をプロデュースしている人たちにメスを入れて暴き出す?あるいは逆に、「戦争反対と人は言うけれど、本当は戦わずにはいられない生き物なんじゃないか」とか?いずれにしても、目を背けたくなる現状に、おそるおそるではあるけれどしっかりと目を向けるアメリカの映画界は、確実に前に進んでいて、戦争の中にある美醜を感覚的に描くところにとどまっている日本とは比較にならないくらい、ジャーナリズムがちゃんと働いているなぁと感じます。