映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

イ・ジュヒョン 監督「レッド・ファミリー」1063本目

ベースとなる問題は今に至るまで長期にわたって続いているので、切り口がいっぱいあります。
この映画は、ブラックコメディととらえればいいのかなと思いました。

レッドファミリーは北のスパイ、一見家族のようだけどためらいなく人を殺す。その隣の家族はおそらく韓国のふつうの家族よりだいぶ逸脱していて、妻は浪費癖があって夫をどなってばかり。(でもそんな嫁に、姑はわりと優しいよね)

最初から、明らかに軍事地域で禁止されている写真をわざとらしく撮りまくっていて、これはわざと北の周到さと裏腹なうかつさを表してるんだろうか、と思ってしまった。浪費家家族の大げんかが一語一句聞こえてくるということは、スパイ家族が同志と呼び合っていることをお隣も気づいてるだろうし、もしかしてお隣こそがスパイ家族を見張るために南が仕込んだスパイなんじゃないか、などと猜疑心を膨らませてしまいました。

二度と会えない家族への愛と、仮に一緒に暮らしてる仲間とのつながり。どちらが大事という比較に意味はなくって、家族を人質にとって人殺しをさせるということの非道さが問題だよね?

実際にこういう北のスパイってこんなに大勢いるんだろうか。
ソウルから国境地帯に旅行したときに、あまりにも国境が近くてびっくりしたけど、昔掘ったトンネルが見つかって埋められる前に大勢すでに移動してきてたのかしら。すぐ隣の半島で起きていることは、計り知れないです…。