映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

アルノー・デプレシャン 監督「キングス&クイーン」2363本目

この監督の作品は初めて。なんで借りようと思ったのか思い出せない。。。

150分もある大作だけど、テレビドラマのように日常的で、テンポよく流れていくのでちっとも長く感じません。要は、ノラ(多情な女性の典型的な名前?)の最初の男、二番目の男、結婚間近な婚約者と父親が「キングス」で彼女が「クイーン」ってことか。最後の最後に彼女は、愛する4人のうち2人を死なせたと言っているんだけど、この中に愛する息子を含めると死んだのが1人になってしまうので、父が最後の1人と考えるべきでしょう。

エマニュエル・ドゥヴォスは豊かできれいだけど、普通の女の人という印象なので、最後近くの父の遺言が自分のことのように痛いですね。かなり病状が進んでしまって感情もやられてたのか?とか、ヨーロッパの人きついなぁ、とか、自分に理解できる方向にもっていこうとするけど、やっぱりショック。言われてみれば確かに彼女は自分を何より大事にしてる。息子を父に預けっぱなしだったり、婚約者を振り回したり、二番目の男が許せなかったり。でもそれは、彼女の許容度合いがもともと低めだからで、それって父親自身とソックリでもある。

最近よく見るスペイン映画では、面と向かって怒鳴り合う場面は多いけど、手紙で「お前が嫌いだ」「お前は自己中だ」と書くような陰湿な感情表現を見ることはないので、ちょっとドン引きしました。きれいに整った欧米的大人の世界が、この映画にはあります。

でもね、面白かった。利己的な部分、クレイジーな部分、愛情あふれる部分、全部含めて人間だもん。私は、ノラが反省して終わるだけの結末だとは思いたくないな~。 

キングス&クイーン (字幕版)

キングス&クイーン (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video