映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

ポール・ハギス監督「クラッシュ」2391本目 

2004年にアカデミー最優秀作品賞を受賞した作品。なるほどなぁ。バラク・オバマが大統領になる2009年に向けて、アメリカが強めていった正しい人種問題の意識をこの時期のアカデミー賞に反映した感じがします。いまだ明確な解決は見られないけど、国じゅうのあちこちでこんな問題が起こっている、だけど僕らは根本的に人間性を忘れたわけではない、という自己肯定で終わることができている。

見えないマントや込められなかった弾丸に夢をつなぎつつ、正義をふりかざす者が陥る、自分の中にある偏見の問題をあぶり出す。ある意味単純すぎる二分法の映画でもあります。正しそうな奴がいいことをすると思うな。黒人女性の取り調べ中に性的いたずらをする警官が彼女を炎のなかから救う。…ってエピソードが単純で説明的すぎます。映画的でもないし芸術的でもない。でもこの時代のアカデミー賞がそういう価値観だったってことなんですよね。

今は2020年、このあとの16年間はけっこう長く感じられます。今年のアカデミー賞はどの作品が取るか、楽しみです。それがアメリカのショービジネスの世界の価値観を如実に表すから。

クラッシュ (字幕版)

クラッシュ (字幕版)

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