映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

三浦大輔監督「娼年」2439本目

「恋の渦」「愛の渦」の監督か。それで納得した。あの2つの映画も、エロスを追求するんじゃなくて性ってほんと人間そのものだよね、と、動物の交尾を観察するように、あけすけに描写した映画だった。この映画の場合、最後のオチはどうでもよくて(ということは、映画としては、ないほうがすっきりする)、監督が描きたかったことの中心は女性の性の面白さ、奥深さなんだろうな。

なぜなら女性の性は表に出ない分、本当のことがわかりにくいから。同じように「娼婦」を買う男性の場合は、おそらくもっと高圧的で客だから当然という態度のことが多いと思う。でも女性の場合、もっとまどろっこしくて面倒くさく、最初は顔合わせだけだったり、ストーリーを求めたり、そういうことが大事だったりする。相手のそういうことを丁寧になぞって、欲しているものを与えればそれが評価される。サービス業だなぁ性風俗って。

“松坂桃李の体当たりの演技”はむしろ、脇に置いて見たいところです。彼の役柄は映画の中心として全体を引っ張っていくんじゃなくて、女性たちを映し出す鏡みたいにちょっと引いた位置にあるから。

三浦監督が脚本で、他の人が監督する映画も、もっと見てみたいです。これからも、表に出てこない性の、人間のおもしろみをずっと描いてほしいです。