映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

李相日監督「流浪の月」3584本目

重そうなので元気なときに見てみた。思ったほど重くなかったかな。

この監督の作品は「悪人」が最高に好きで、あの中の深津絵里と妻夫木聡の、ふだんから遠く離れた”きたない”姿が素晴らしく美しかったのを思い出すと、この映画は、私の眼には、ちょっとキレイすぎた気がします。こまかくいうと、横浜流星は十分きたなくてすばらしかった一方、広瀬すずと松坂桃李は、虐げられていてもきれいで、あまり欠落とか空虚とかを抱えているように見えなかったなぁ。実際の空虚な人たちは、意外と彼らのように美しいのかもしれなくて、私の先入観や偏見なのかもしれないけど。

広瀬すずはエリザベス・テイラーだと私は思ってて、どこか立派すぎるのかな。不幸な境遇には十分しっくりくるんだけど、重力がありすぎて、”かわいそう”と思えるほど弱さを感じないのかもしれない。

平安時代には大人が幼い少女をめとってもよくて、今は手を触れなくても有罪だとか、人間たちのルールってほんとに勝手なもんだ。性的な関係があろうとなかろうと、一番大事に思える人どうしがやさしくいたわりあって暮らせることが一番なのだ。だけど、表面的にルールを守りながら、被害者意識を強くもって、ルールを外れる人たちを糾弾しつづける人たちが、これからもずっとマジョリティでい続けるんだろう。私はそれでも愛し合う人たちの居場所を探し続けたいと思うけどね・・・。

流浪の月

流浪の月

  • 広瀬すず
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