映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

マイケル・フランコ監督「父の秘密」2649本目

<ネタバレあります>

原題は「ルチア(母の名前)亡き後」だけど、邦題は「父の秘密」だ。秘密は父にも娘にもあるのに、どうして父の秘密なんだろう。

一人娘アレハンドロの受けている壮絶な集団いじめ…なんでそれでも学校や合宿に行くのをやめないんだろう。それほど父親に心配をかけたくないのか。メキシコの学校はこれほど放任なのか。こんな合宿ならやらないほうが教育的だ。このままじゃこの子、殺されてしまう…と思ってたら、命の危険が。

最終的な父の行動は、ありそうな行動ではあります。ペドロ・アルモドバル監督の映画なら、娘が生き延びていることを勘案してもハッピーエンドの趣さえあるだろう。勧善懲悪の観点からは「悪がひとつ滅ぼされた」。私はというと、「…そうか。」と寂しいような、ほっとしたような気持ち。

父の秘密は最後の最後に作られた。その秘密は、そのうち浜に打ち上げられる少年の足取りを調査する警察によって暴かれるかもしれない。父子は最初から壊れてるのにずっと表面を取り繕っていて、ボロボロにほころびてるのに、まだ取り繕ってた。娘はもう取り繕うのをやめて、二度と父のもとに戻らないかもしれない。

父と娘は腹を割って話し合えばよかった?カウンセリングを断らないで受けさせておけばよかった?深い根のある問題は、たまたま当たったカウンセラーのスキルにゆだねられるのか。簡単な解決策も出口もない。総括の難しい映画っていうしかないな…。 

父の秘密(字幕版)

父の秘密(字幕版)

  • メディア: Prime Video