映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

クリストファー・ノーラン監督「TENET テネット」2674本目

<ネタバレもちろんあり注意!>

早速見てきましたよ。まっさらな状態で予約したのでIMAXじゃなくてMX4Dで見てしまいました。IMAXいいけど私は目があまり良くないので、テーマパークみたいにドカン!とかぷしゅー!とか楽しませてもらえて良かった、のではないかと思うことにします。高かったけど!

感想:今度はこう来たか。ほんと面白いこと考えるよなぁノーラン監督。ずっと「時間」を命題のように映画を作り続けているけど、「メメント」では気まぐれな時間に翻弄されるだけ、「インセプション」では夢の中の決まった条件で次元を移動することである程度時間のコントロールをつかみ、「インターステラー」では仕組みは明かされないけど自分が望むピンポイントのタイミングで過去にアクセスできるようになった。今度は次元も時空も超えないけど、なんと時間を手でつかむかのようにこの地上でコントロールできるようになった。そして今の映像技術があるから、時間を逆回ししている未来軍と今の自分の軍の戦いっていう場面も作れるようになった。あの辺、MX4Dで見るのが楽しかったですよ。(あれ、車は逆行するのに自分との取っ組み合いは逆じゃない感じもしたなぁ)この映画ってほんと、「うわぁ~何これ面白い!」と楽しむのが一番です。細かいことは後でDVDで見ながら突っ込めばよし。

そして今回も、キャスティング絶妙。ジョン・デイヴィッド・ワシントンは「ブラック・クランズマン」でも勢いがあって無鉄砲で愛されるヒーロー役に見事にはまってたけど、この映画もそのいい流れに乗っています。ロバート・パティソンは二枚目然とした暗いバンパイアのイメージが好きじゃなかったんだけど、この映画ではひときわ安っぽいスーツ(大金持ちから見れば)でふにゃっと笑う感じが、バンパイア時代の端正さを崩してくれていて親しみが持てます。エリザベス・デビッキはちょっとムカつくくらいの勝手さが素敵。大した恋愛もないのに救われて振り回す、まさにボンド・ガール。ケネス・ブラナーは悲壮感伴う老人がうまい!(まだ50代だけど!)そしてやっぱりマイケル・ケイン。この人見るたびに、(今は落ち着いた老人だけど若い頃はめちゃくちゃイケてたんだよ…みんな「アルフィー」見た?)と言いたくなります。マッドネスのアルバムに「マイケル・ケイン」っというまんまなタイトルの歌もあります。「イエスタデイ」のひとりビートルズ、ヒメーシュ・パテルもいい愛嬌があります。

さて。ストーリーについては、最後の最後のオチもいいし、だんだんわかってくる”自分との闘い”や”倒れていた相棒”もいい。ラスボスの正体を知った後で思うに、彼が冒頭で飲まされた自殺カプセルをすり替えたのは誰?→思い出した、あれはそう思わせておいてテストだったから、すり替える必要はなかった。でも誰がテストしたんだろうね(笑)。ラスボスであった彼が世界存続作戦の全貌を計画した頃、どれくらい年を取っていただろう。セイト―(インセプションはサイトーが出て来たな)はいつどうやって時間の仕組みを知ったんだろう。彼がいた未来はどんな未来だったんだろう。自分対自分の殺し合いで、過去が未来を殺すことはありうるけど、未来が過去を殺してしまったら自分はその瞬間、消滅するんだろうか。

いろんなことを自分の頭で考えるのが一番の楽しみ。解説を見たり聞いたりする機会もあると思うけど、先送りしてしばらくは余韻に浸りたいと思います。