映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

オットー・プレミンジャー監督「バニーレークは行方不明」2995本目

<ネタバレあります>

「My Best Movie」に何度も選んだことのある、大好きな作品。BSプレミアムシネマにかかったので、久々に見てみることにしました。

最高にスタイリッシュなオープニング。結末を知っているからこそ、俳優たちの一挙手一投足を見逃さないよう、食い入るように見る。冒頭のどアタマでお兄ちゃんが”どこかから”戻ってきたとき、まだ揺れているブランコの下にある小さいぬいぐるみを、いまいましそうな表情で拾い上げる。それを彼は自分の鞄の中に片付けて引っ越し業者の人たちと一言二言交わして出ていく。

キア・デュリアが「2001年宇宙の旅」で異次元に迷い込む宇宙飛行士だと気付いたのは、あの映画を何度か見た後だったけど、印象的な青い瞳がこの白黒作品ではわかりにくいですね。でもなんともいえず怪しい雰囲気が素敵です。今ならキリアン・マーフィーに演じてほしいかも。(でも無名の俳優が演じたほうが得体が知れなくて面白いかも)

その一方でローレンス・オリビエの信頼感、安定感って欠かせないですね。この映画の中で唯一、信じられる存在。

終盤、お兄ちゃんの様子がおかしくなって妹がしっかりしだすのが、あまりにも突然で、紙の裏表をひっくり返したように対極的なのが、つじつまを愛する鑑賞者として見ていると白けてしまうかもしれません。もしかしたらこの映画は、今なら「スマホを落とした…」みたいな、大規模なオーディエンスを驚かせ、喜ばせる目的で作られた作品なのかもしれません。今見るから最新の作品とのテイストのギャップが醸し出す「味」が熟成されて魅力を感じるのかな。

あまり魅力を感じない人の気持ちもわかるけど、やっぱり私の目には今でも、ものすごく引き込まれる素敵な映画なのです。

バニー・レイクは行方不明 (字幕版)

バニー・レイクは行方不明 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video