映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

森達也監督「A2完全版」3067本目

「A」に続いて2001年に公開された「A2」に、さらに編集を加えて2015年に公開された作品。(続けて見ると、ますます重いな…)

今度は上祐氏が出所してきたり、信者たちの居所があらゆるアンチの人たちに取り囲まれて反対運動の標的となります。…森監督は冷静に事実を観察する、と思っているけど、マイケル・ムーア作品を見てるときみたいな、「あれ、ずっと思い込んでたことはマスコミの刷り込みだったのか?」という気がしてくるのが、なんかむずむずする。つまり取り囲まれている彼らが無邪気な生き物みたいに思えてくるし、取り囲む警官や監視団と中の人たちは、楽し気に談笑してるじゃないか。監督の意図は、「オウムは悪くない」というのではなく、罪を憎んで人を憎まずというか、罪悪を成さなかった信者まで袋叩きにすることが本当に正義なのか?ということであって、彼らの味方をするってわけじゃないと思うけど、同じ人間として接してもらうと彼らも素直に笑うのだ。

彼らの信仰は、実践するかどうかは別だけど、教祖は絶対なんだって。あのような教祖、あのような窮鼠猫噛むような状況で悪へ走ってしまう教祖が現れなければ、無邪気な笑顔を保てるんだろうか。難しい。じつに難しい。複雑な顔でそんなことを言っていた反対派のおじさんと同じ顔になってしまう。

とまじめなことを言いつつ、思い出したのは、辺境探検の高野秀行がミャンマー国境のアヘン栽培地で現地の人と仲良くなって中毒になった話だった…。