映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

園子温監督「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」3351本目

大変前評判が悪くて、逆にわくわくします。ダラダラ飲みながら「今までで食べたもので一番マズかったのは何?」ってネタで盛り上がったりするみたいな感じで(似てるか?)「退屈な作品」「ありきたりな作品」よりずっとそそります。KINENOTEで(見る前なのに)感想を読んでると、みなさんの、ひどさの表現がそれぞれ秀逸で…。

では、感想です。

けちょんけちょんに書けないのが残念なくらい、普通に味わってしまった。園監督作品は、こういうことがある。「アッシャー通り」は合わなかったので、もうこのような蜜月(なのか?)は終わったのかと思ってたけど、「愛のむきだし」で出会って「ヒミズ」で号泣して、熱帯魚や紀子、自殺サークルやひそひそ星、地獄でなぜ悪い、まではまり続けた実績があるくらいで、もともと肌の合う監督なんだと思います。

ふんどし姿の激烈に情けないニコラス・ケイジが愛しくてたまらないとか、「クライマックス」で異世界スレスレのトランスを彷徨ったソフィア・ブテラにここにいて欲しいとか、栗原類も渡辺哲も、自分の愛するスレスレのキャストを集めた。TAKは悪くないけど、本音をいうと「龍馬伝」で龍馬を斬ったBlankey Jet Cityの中村達也が本格的に殺陣をやって国際的俳優になってほしかった。…彼らが同時に存在する世界はゴーストランドしかありえなかったから、こんな世界観になった。なんか、「バリバラ」で作る番組内ドラマみたいなんですよ。この映画の次は、国籍や暮らす地域や言語だけじゃなくて、姿かたちにもっとバラエティのある作品を、園監督にこそ、ぜひ作ってみてほしい気がします。足があったりなかったり、あっても長かったり短かったり。

あまり好きじゃなかった部分は、園監督作品の若くてパワフルな女の子像が、ここ数年わりといつも同じおかっぱで筋肉質な感じなのが少しツマラナイのと、大事なのかもしれないけど原発に関するメッセージはあんなに朗々と語り上げるんじゃなくて、最後にわかるくらいに抑えてほしかったです。古時計の歌もどうでもいいので長く感じる。

私そろそろ3600本も映画を見て、まあまあ知識とか理屈で映画を見てるような気になってたけど、この感想を書きながらまったくもって右脳だけで感性だけで見てるんだなぁと気づいた始末です。

点数をつけようとすると、高得点ポイントがひとつもなくて、すごくつまらない低いだけの点になってしまいそうだけど、私は典型的な「どれも真ん中くらいにつけてしまう」派なので、この作品は点数をつけないでおきます。

ぶっちゃけこういう映画はストーリーはどうでもいいと思って見てるのですが、ニコラス・ケイジとニック・カサヴェテスが銀行強盗に入って、行員や客や警察を大量に殺して自分も殺されて、ゴーストランドのプリズナーになって同じく死者であるゴースト遊女のソフィア・ブテラ等々とからむって理解でいいですか?(違うな。そんな理解で「自分にわりと合う」とか言ってるのか私は)

ガムボールの少年はひたすら純真で可愛く、色町は鬼滅の刃遊郭編みたいにカラフルで綺麗。で、ちょっと悲惨。園監督は、いくつになっても、好きな子をいじめるタイプなのだ。