映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

園子温監督「エッシャー通りの赤いポスト」3292本目

これまで、私が見た園監督の最も新しい作品はAmazonオリジナルの2017年「東京ヴァンパイアホテル」だった。あれはひどい(いい意味で、きわめて園子温的)、やりたい放題の作品だったので、園監督を「エッシャー通り」を作らずにいられなくしたのは、直近のニコラス・ケイジ主演のハリウッド作品かなぁ。お金やプロデューサーの意向が監督の指示を圧倒するのって日本よりハリウッドっぽい気がする。

園子温作品に関しては、ファンと言っていいくらい好んで映画館でずっと見てる私なので、(「心中クラブ」には共感しないけど)自分が求めるものがある程度固まってしまってるかもしれない、とはいえ。

エキストラは2回やってみた経験がいちおうあって、ひたすら言われた通りに歩くだけだったり、何度となくエキストラをこなしてきた自慢をするおじさんがいたり、楽器を持った若い女の子が混じってたりする感じが”あるある”で面白かったけど…あえて言いたい。私たち映画館の客は、「人生のエキストラ」ですらなくて「人生の"観客"でいいのか!?」という問いを突き付けられているということを。(←なにを熱くなってる)

監督から見ればエキストラって、しばしば無償で言いなりになるAD以下の存在で、人として扱ってない、興味を持っていない、というひけめがあるのかもしれないけど、私みたいに現場が見たいだけで女優願望も輝きたい願望もない物見遊山もいるので「すみません、かえって気を使わせちゃって」という気持ちにもなります。だってエキストラ以外にも裏方とかスタントとか、いろんな人がいるし…。

いやむしろ私は「別段ぱっとしない普通の通りがかりの中年のおばさん」を見事に演じきった(※普通にしてただけ、ともいう)のが4秒くらい映ってて、そのダサさに我ながら満足したので、性格俳優や切られ役、老婆、化け猫などをもっぱら演じる役者みたいに立派にエキストラだったと誇りを感じてるんだがなぁ。。。

ということで、面白かったけど妙に油の抜けたさわやかな作品で物足りなくもあったのでした。

<追記>
出演してる女の子たちみんな、ピッカピカに肌がキレイでしたね。園子温ワークショップに参加するくらいで、思い切りのいい発声してました。ただ、レズビアンズって啖呵を切った子たちが男で争ってるのって「え?」だったよね。これが「ゲイメンズ」で女を争ってたら、もっとクレームつきそう。レズビアンって言葉は、今いちばん消費されてる言葉のような気がしてなんとなくちょっとイヤでした。