映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

トニー・スコット監督「トップガン」3412本目

当然これ見て復習するよね。(先にこっちを見直すのが普通か。たまたま映画館に行く時間が作れたので「マーヴェリック」待ちきれずに見てしまった)

冒頭の文章はまったく同じ、タイトルの後に空母の状況、ケニー・ロギンズ、という流れも同じ。練習飛行でしくじり、叱責を受ける仲間。バーでやらかした翌朝登場する新しい教官。・・・既視感(こっちが先だってば)、でもマーヴェリックがまるで少年だ。「卒業白書」と変わらない。彼も青いけど全体的にこの映画も青い。イケてるけど名画ではない、っていうイメージ。敵は「ミグ」と指定されてるし、戦闘シーンも、いいけどもう一度見たいほどではない。ロマンスの設定もちょっと背伸びしてる。マーヴェリックと彼の父親との関係も、私たちは初耳なので胸にくるほどではない。この世代が親になった今はじめて、同じ物語を息子の世代で語らせることに感動が生まれるのかも。

つまり、あれはトム・クルーズによる「シン・トップガン」?

なんで日米で、”リバイバル”でもなく、関係者たちによる作り直しをやってるんだろう。日本の一連の「シン」は、当時こどもだった世代に夢を取り戻させ、若い世代に祖父の世代の偉大さに気づかせる、つまり、”弱ってる日本を元気づける映画”だと思う。アメリカもあの映画が必要なほど、意外と弱ってるってことなんだろうか?

この映画のヒロイン像は、セクシーで知的な年上の金髪女性。マーヴェリックでは8歳年下の黒髪でミステリアスで強気な女性。ジェニファー・コネリーにはロシア、ポーランド、アイルランド、ノルウェーにユダヤという豊かなダイバーシティを備えている。今のアメリカの敵は単純にロシアではなくて、アメリカの中でさまざまな違いを攻撃し合うこと自体が最大の敵かもしれない。エンタメ映画の基本設定は世の中の動きに合わせて、時代によって変わっていく。

全体的に、構成は「マーヴェリック」と相似だけど、戦闘シーンが簡潔なぶん、不慣れな私にはポイントがつかみにくい。この映画を語りなおしたい、もっと完全な「トップガン」を作りたい、っていう気持ちも「マーヴェリック」の製作意図の中にあったのかな。

こっちを先に見直すべきだと思ってたけど、いきなり「マーヴェリック」を見たから先入観なく楽しめたのかも。大昔に見た記憶をたどるだけなら、「マーヴェリック先」もありだな。

最後に、音楽について。ベルリンのサウンドはまさにジョルジオ・モロダーだけど、全体的にあまりにアメリカン・ロックっぽくてアップテンポなので、モロダー流のユーロビート的ディスコとは違う感じのサウンドトラックですね。エンディングテーマはチープ・トリックだったんだなぁ。

トップガン (字幕版)

トップガン (字幕版)

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