1971年に、当時の若者たちがイキがって撮った前衛映画。
私は若いとんがった人たちが何かにもがきながら生み出した作品には好きなものが多いけど、若い人はバカで無鉄砲だから愛しいわけで、こざかしい若者はめんどくさいのだ。この作品は、「あらかじめ失われた恋人たちよ」というカッコいいフレーズを思いついたのを大発明だと思って、わかってない世間に今の俺たちを見せつけてやるぜ!という不遜な思い込みを垂れ流してしまった、という感じがするなぁ。言葉キツイけど。
外国のニュー・シネマに憧れてその日本版を作ろうとして力みすぎたかな。主役の石橋蓮司は単にいつも変な反応をするやつだし、聾唖の女とか市場で売春に誘う主婦とか、普段暮らしてても出会わない人ばかり出てきて「普通」がなさすぎるので、共感への入口が見つけられない。見る人がどう見るかという自己分析を放棄してる。身体の底から切々と湧いてくるリアリティが感じられれば、「私とは違うけどこの人も切実だなぁ」って思えるかもしれないのに。
田原総一朗?ジャーナリストとしては歯に衣着せぬもの言いが痛快なこともあるけど、他の人の話に共感することができない人だなと思ったことがある。だからこんな作品ができちゃったのかな…。
タイトルだけ知っていて、なかなか見る機会がなかったのでワクワクしながら見たけど、往々にしてそういう映画って、見なくてもよかったと思ったりする。(私も自分勝手な観客だな…。)