映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

カンテミール・バラーゴフ監督「戦争と女の顏」3668本目

この映画が2019年にロシアで作られたなんて、ほんとに謎な国だ。女性における戦禍をこんなにさらけ出して厳しく批判しておきながら、今は隣の国をためらいなく攻撃している。少ししか知らないけど、あの国にあっては、いろいろな考えや気持ちが一人の人の中に共存していて、大きな矛盾があることが存在意義だというくらい、開き直っている。ように見える。

今の状況がなければ、とんでもなく不条理な寓話として見たかもしれない。この国の女性像は、革命前ならアンナ・カレーニナで、戦時下であればイーヤとマーシャなのか。原作の「戦争は女の顔をしていない」について聞いたときは戦争の恐ろしさを普遍的なものとして感じたけど、この映画化はすごくロシア的に思えて、戦争批判よりそっちばかり気になってしまう。

自分自身が劇場みたい。人に見せるための演技ではなくて、自分で自分の役柄を決めて、演じる自分を見て満足する。特にマーシャだな。だからサーシャの家で赤裸々に戦地でのことを話し、受け入れられなくても帰りの路面電車の中で薄笑いを浮かべる。イーナは男ではなく彼女を愛しているけど、マーシャにとって彼女は「腹」なのだ。

やっぱり不条理劇だよなぁ・・・。

戦争と女の顔

戦争と女の顔

  • ヴィクトリア・ミロシニチェンコ
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