映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

エンゾ・モンテレオーネ 監督「炎の戦線 エル・アラメイン」2016本目

<ほぼネタバレ>

イタリアの現代戦争映画って、見たことないので新鮮です。濃い顔でイタリア語を喋る兵士たち。大バカ者と言われそうだけど、(イタリア人も戦争するんだ・・・)正しくは(イタリアにも戦争映画があるんだ)という驚きがまずあります。

第二次大戦でイタリア(枢軸国の味方の方、途中まで)はエジプトにまで戦線を広げて、そこでイギリス軍に敗退したのか。(何も知らなくてすみません)

敵の砲撃の受け方を先輩から教わった直後に、その先輩だけがやられた。地雷を踏んでしまったけど、それは戦車用のもので人間が踏んでも無事だった。そういう「奇跡」を人間は誰でも3回経験するという。

銃弾の中へ歩き出していくベテラン兵士のデ・ヴィータに向かって、初々しい新人セッラが戻ってくるよう呼びかけ続ける場面。彼らがこの無謀な戦闘場面を生き延びて、別の仲間が重傷を負うのがなんともいえません。負傷者がいるから入れないと言われた避難所に押し入って見たら、スカスカの室内に高級将校たちがゆったりと休んでいる。外は銃撃の嵐なのに・・・。

大きな石(「はじめ人間ギャートルズ」に出てくる石のお金みたいなの)を担いだ半裸の男が砂漠を歩いていくのと小隊がすれ違う場面があるんだけど、あれって何なんだろう。みんなで見た幻?

英国軍に見つかって捕虜になるのと、隠れおおせて3人だけで水も食料もない砂漠をさまようのと、どっちがマシ?一緒に戦ってきた2人を置いて、やっとエンジンがかかったバイクで一人、助けを求めに走るのは喜ばしいことなのか?この時点で残った2人にはもう奇跡3回のカウントは0になってたんじゃないか・・・。

結末は明確にされないけど、最後に戦没者の名前が連なる碑の前で立ち尽くしている老人が、歳を重ねたセッラのようにも見えます。

ひとつの戦争を、戦勝国側と敗戦国側の両方からみるのって、大事だと私は思ってます。戦勝国の中でもアメリカとイギリスとロシアは考え方が違うし、敗戦国の中でもドイツと日本は違うので、同じ戦闘をそれぞれがどう認識したか、どう映画化したかを並べて見てみるのはとっても興味深いです。いい映画でした。

炎の戦線エル・アラメイン [DVD]

炎の戦線エル・アラメイン [DVD]