映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

前田陽一監督「虹をわたって」3684本目

なんと天地真理主演作品。U-NEXTの「新規入荷作品」で見つけて、つい見てしまった。1972年作品。歌を聞くとつい鼻声でものまねをしながら歌ってしまう世代、「まりちゃん自転車」が欲しかったけど買ってもらえなかった世代です。

彼女の存在感は今なら誰だろう、とたまに考える。明るく可愛らしく清楚でキャラが強すぎない、お人形的な存在。絶対的不可侵。多分この人、アイドル像は多分に人工的に作られたものだとしても、明るくてのんきで根っから天真爛漫な人なんじゃないかな、という気がする。あまり計算せず、このあと成人映画に出てしまったり、大人のキャラクターを作れずに今に至っているのが、すごく普通の人のように思えて。意外としっかりした歌声を聞いてると、「おかあさんといっしょ」の歌のおねえさんみたいな感じもする。

ドリフとかクレイジーキャッツとかの映画もだけど、流行を狙った昔の映画って、当時の人たちの服装や文化がリアルに伝わってくるので楽しい。当時はまだチビで、その頃の大人の世界は遠く思えてたけど、今見ると若造たちだ。

岸部シロー、なべおさみ、三井弘次、財津一郎、有島一郎、一緒に働いてるチャキチャキの女子は左幸恵だ。そして萩原健一。若い。若いけど初々しくなくてふてぶてしい。さすがだ。この頃、テンプターズは解散してPYGSという本格的なグループを組んでいて、映画「約束」で評価されて「太陽にほえろ!」にも出ている。でもその少し前にはテンプターズのアイドル映画やドリフの映画にも出ていた。当時はまだその後の方向性が世間的には確定していなくて、何でもやってた感じだな。

沢田研二もタイガース解散後、ショーケンとPYGSをやっていた時代。この映画の中で、あまりヒットしなかったらしいソロデビュー曲を歌う場面があります。・・・いろいろ、ちぐはぐな感じだけど、みんなまだ軸が出来上がってなかった時代だ。

「男はつらいよ」もドリフも、あらゆるアイドルやお笑い芸人をフィーチャーしたコメディ映画も、楽しくてそれなりに面白いのだ。今ってもうこういう安心して見られる映画ってあんまりないのかな?私はひとつの時代の文化として、こういう映画を振返ってみるのが大好きなんだけどね・・・。