映画と人とわたし by エノキダケイコ

映画は時代の空気や、世代の感覚を伝え続ける、面白くて大切な文化だと思います。KINENOTEとこのブログに、見た映画の感想を記録しています。

バラン・ボー・オダー 監督「ピエロがお前を嘲笑う」3716本目

<ネタバレあります!>

どんでん返しがありそうなので、他の方のレビューは読まず、前情報も抑えて見てみました。

主役ベンヤミンは知的で小柄で、ケンカは強くなさそうだけど、ちょっと鬱屈したかんじの青年。こう見えて実は・・・?と思わせます。なかなかスリリングな展開で、ベルリンのちょっと不良な若者たちのいまどきの遊び方がカッコいいし、最後まで飽きずに見せます。

<ネタバレしますよ>

この映画、最初からずっと、「ユージュアル・サスペクツ」のハッカー版かなと思いながら見てしまって(同じ気持ちの人、多分他にもいるはず)、解離性・・・というあたりで「そういうオチもあるか」と思ったところに、最後にまたどんでん返しが来たわけです。マリだけでなく彼女の周囲の男たちにもインタビューしてほしかったし、いくらソーシャル・エンジニアリングに長けてるといっても女性捜査官がやさしすぎてちょっとなぁ、という気もします。でもなんとなく、大団円がスッキリしてるので、モヤモヤ感が強くは残りません。ベンヤミンが超絶ハッカーでしかも天才犯罪者、という完璧キャラクターだとちょっと見飽きた感じだけど、社会性があんまりなくて、他の仲間に助けられてやっとやり遂げた、というあたりも、少し現実に近づいてきてバランスが取れた結末でした。

ベンヤミンを演じたトム・シリング、この映画でのキャラクターのせいもあってか、カンバーバッチの「シャーロック」のモリアーティを演じたアンドリュー・スコットを思い出したけど、「ある画家の数奇な人生」でゲルハルト・リヒターを演じたのと同じ俳優ですね。

全体的に、何度も見たいほど凝ったトリックではなかったけど、面白く見られました。(でも、角砂糖を素手でいじったりポケットに入れたりしたら、ベタベタになるしアリが来るよ~~~)